腎移植内科研究会

腎移植内科研究会・第3回学術集会

脂腺癌に大腸がんを合併した 生体腎移植レシピエントの1例


◯嵯峨崎 誠、中田 泰之、山本 泉、川邊 万佑子、山川 貴史、勝俣 陽貴、眞船 華、勝馬 愛、 小林 賛光、丹野 有道、山本 裕康、横尾 隆
東京慈恵会医科大学 腎臓・高血圧内科

症例は 43 歳女性。IgA 腎症による末期腎不全で、32 歳に血液透析導入を経たのち、33 歳時に実父をドナーとする血液型適合生体腎移植を施行した。 移植後の腎機能は、血清 Cr 1.5mg/dl 程度で安定していた。
移植後 10 年目に、左後頭部に 2 ㎝大の腫瘤を認め、その後わずか 2 ヵ月の経過で 4cm 大まで増大したことから、全切除を施行した。 結果、脂腺癌の診断に至り、追加拡大切除を実施した。さらに、大腸内視鏡を施行したところ、早期大腸がんが確認され、内視鏡的切除を施行した。 今後、Muir-Torre 症候群の可能性も考慮し、遺伝子検査を検討中である。
移植患者では、免疫抑制剤の影響により、皮膚がんの発症率が上昇する。脂腺癌は皮膚がんの中ではまれだが、健常人に比べ 5 倍の発症率であり、注意を要する疾患である。 それに加え、脂腺癌の中には常染色体優性遺伝を呈する Muir-Torre 症候群の合併が知られており、内臓悪性腫瘍を合併しやすいという特徴を有する。 本例は大腸がんを併存し、同症候群の 合併も考慮した診療が必要であり、移植患者の悪性腫瘍を考える上で示唆に富む一例と考え報告する。