腎移植内科研究会

腎移植内科研究会・第3回学術集会

蜂巣炎を契機に診断された Helicobacter cinaedi 菌血症の腎移植患者2例


◯遠山 由貴1、豊田 麻理子1、川端 知晶1、濱ノ上 哲1、前川 愛1、上木原 宗一1、宮田 昭1、 日高 悠嗣2
1熊本赤十字病院 腎臓内科、2同 外科

Helicobacter cinaedi(以下 H. cinaedi)は、1984 年に初めて報告されたらせん型のグラム陰性桿菌で、免疫抑制患者の菌血症の原因となる。 菌血症にはしばしば皮膚病変を伴うことがあり、今回移植患者で蜂巣炎を契機に診断された H. cinaedi 菌血症の 2 例を経験したので報告する。

【症例 1】 33 歳男性。10 年前に生体腎移植施行。慢性抗体型拒絶反応のため約 3 か月前にステロイドパルスと Rituximab 投与を行った。 入院 1 ヵ月前より移植後閉鎖したシャント吻合部付近の発赤、疼痛あり。血栓性静脈炎あるいは感染が疑われ抗菌薬が開始されたが、同時に左下腿にも発赤が出現、 38 度を超える発熱と悪寒も出現したため入院となった。入院時の血液培養より H. cinaedi が検出され、6 週間の治療を行い改善した。 その後、再発しさらに 4 週間の抗菌薬治療を行った。

【症例 2】 31 歳男性。2 年前に生体腎移植施行。悪寒を伴う発熱と両下腿の発赤、疼痛を主訴に来院。蜂巣炎の診断で入院となった。 初診時血液培養から H. cinaedi が検出され、4 週間の抗菌薬投与で改善した。

【考察】 H. cinaedi 菌血症の皮膚所見として、四肢に多発する痛みを伴う紅斑が特徴である。実際蜂巣炎で血液培養を採取することは少ないが、 同菌は血液培養を採取しなければ診断できない。また、培養にも時間を要するため、免疫抑制患者の非典型的な蜂巣炎を見た同菌の感染症を疑うことが重要である。