腎移植内科研究会

腎移植内科研究会・第2回学術集会

腎移植ドナーの癌について


◯宮里 均
沖縄県立中部病院 腎臓内科

【はじめに】腎移植のドナーの基準は米国、欧州でことなり本邦のガイドラインとしては臨床腎移植学会の示したものがありそれぞれに違いが見られる。
悪性腫瘍に関するところは非常に重要だがもっとも異なるところでもある。
当院にてドナー術前の大腸内視鏡にて大腸癌が判明、治癒切除となったがこれをドナーとしてよいか問題となった。

【症例】ドナーは53才男性、56才の妻への腎提供を希望され来院。子はおらず兄弟等とはあまり親密な関係にはなく他にドナー候補はいない。
術前のスクリーニングにて便鮮血要請、大腸内視鏡にてEMRを要するポリープがあり、切除。切除標本にて血管、リンパ管浸潤ない断端7mm freeのいわゆるm癌で治癒切除と考えられる状態であった。
内視鏡医は1年後の再検を指示。
本症例はドナーになりうるのか。
内科主治医と外科、泌尿器科医にて繰り返しディスカッションを行い、本人らに現在のガイドライン、また症例報告を説明し移植臓器を介しての癌転移の可能性を繰り返し説明した。
最終的に本人らの理解、また強い希望があり生体腎移植となった。
術後経過は特に問題なし。
今後ドナー、レシピとも癌フォローを繰り返しおこなう予定である。
本邦のドナーガイドラインでは癌、ということでドナー適応とならないが実際にそのリスクは必ずしも大きくなくそれによるメリットが上回ることがあることを感じた。この件に関して若干の文献的考察を加え報告する。