腎移植内科研究会

腎移植内科研究会・第3回学術集会

定期移植腎生検に基づく潜在的拒絶反応への治療効果の検討


◯櫻林 啓1、村松 真樹1、板橋 淑裕1、小口 英世1、濱崎 祐子2、兵頭 洋二1、河村 毅1、 相川 厚1、宍戸 清一郎1、酒井 謙1
1東邦大学医学部 腎臓学講座、2東邦大学医学部 小児腎臓学講座

【緒言】 腎移植後早期の潜在的拒絶反応(SAR)への治療介入による、移植腎予後への影響を検討した。

【対象及び方法】 2006 年 1 月~2015 年 9 月に当院で施行した生体腎移植のうち、臨床的拒絶反応がなく移植後 3 か月及び 1 年の定期腎生検を行った 268 例を対象とした。

【結果】 移植後 3 か月の定期生検は normal 214 例(NR 群)、borderline changes(BL)以上 54 例(SAR 群)で あり、SAR 群へ拒絶に対する治療を行った。 患者背景として 3 か月目の生検において SAR 群で有意に 移植後 3 か月居ないのサイトメガロウイルス(CMV)antigenemia 陽性の比率が高かった。 治療後の 1 年目の生検における病理結果は SAR 群(Noramal 70.4%、BL以上 29.6%)、NR 群(Normal 82.3%、BL 以上 17.7%)と SAR 群は移植後 1 年目も拒絶に対して治療介入を要する割合が多かった。 SAR 群におけ る 1 年目生検結果の背景では HLA ミスマッチ数が BL以上(3.75±1.61)に対して、Normal 群(2.68±1.36) と有意に多かった。 移植後 3、 6 か月および 1 年の Cr(mg/dl)は NR 群 1.00±0.45、1.05±0.03、1.08±0.43、 SAR 群 1.12±0.52、1.16±0.06、1.19±0.48 と有意差を認めなかったが、SAR 群は NR 群に比べ高値を推移 していた。 移植後 1、3、 5 年目の移植腎生着率は NR 群で 100%、99.4%、98.5%、SAR 群で 100%、100%、 100%であった。

【結語】 SAR 群に対する治療で、1 年目の結果は良好であった。 SAR は治療後にも繰り返す傾向を示しており、 HLA ミスマッチ数の多い症例や、3 か月以内の CMV antigenemia 陽性といったリスクのある患者におい ては今後、免疫抑制剤の再考を検討したい。