腎移植内科研究会

腎移植内科研究会・第3回学術集会

糖尿病腎ドナーの腎予後


◯新里 高広、竹嶋 咲、黒澤 明、久保 太郎、清水 俊洋、木村 貴明、南木 浩二、八木 澤隆
自治医科大学附属病院 腎臓外科

【背景】 アムステルダムフォーラムレポートでは糖尿病は腎ドナーの適応外とされているものの本邦では糖尿病患者であっても 一定の条件をクリアすればマージナルドナーとして腎ドナーの適応とされているが、これまで糖尿病腎ドナーの予後についての十分な検証はされていない。 そこで今回糖尿病腎ドナーの腎予後について後ろ向き観察研究を行った。

【対象と方法】 2000年1月から 2015年12 月の間に当院で腎ドナーとして腎摘を行った 241 例の内 1年以上経過を追え た症例について糖尿病群と非糖尿病群に分け、 腎摘から 2016 年 12 月までを観察期間とし、術前の患者 背景及び 1 年後と観察期間における最終受診時の eGFR、尿中アルブミン、尿蛋白を比較した。

【結果】 241 例の内 1 年以上経過を追えた症例は 225 例であり、その内糖尿病ドナーは 14 例、非糖尿病ドナーは 211 例であった。術前の患者背景では両群間で有意差はみられなかった。 観察期間の中央値[範囲]は 糖尿病群で 4.3[1.5-10.7]年、非糖尿病群で 4.6[1.0-13.0]年であった。 1 年後及び最終受診時の eGFR の平均値(±標準偏差)は糖尿病群でそれぞれ 52.0±7.1 ml/min/1.73m2、51.7±7.1ml/min/1.73m2であり、 非糖尿病群ではそれぞれ 51.7±10.9 ml/min/1.73m2、52.1±12.2ml/min/ 1.73m2でありいずれも有意差はなかっ た(p=0.915, 0.906)。 1 年後、最終受診時の尿中アルブミンは糖尿病群でそれぞれ 8[2-56]mg/日、9.5 [2-251]mg/日、 非糖尿病群でそれぞれ 6[0-175]mg/日、6[0-626]mg/日でありいずれも有意差はな かった(p=0.316, 0.130)。 1 年後、最終受診時の尿蛋白は糖尿病群でそれぞれ 0.077[0-0.30]g/日、0.079 [0-0.41]g/日、 非糖尿病群でそれぞれ 0.070[0-8.6]g/日、0.051[0-3.7]g/日でありいずれも有意差はなかった(p=0.752, 0.445)。

【結論】 糖尿病ドナーと非糖尿病ドナーでは腎提供後中央値4年間の観察期間においてeGFR、尿中アルブミン、 尿蛋白に有意差はみられなかった。