腎移植前後の心機能変化についての検討
【目的】 低心機能は末期腎不全患者の生命予後に関連するが、腎移植により心機能が改善するかについて統一した見解は得られていない。
今回腎移植前後の心機能変化と、その関連因子について検討した。
【方法】 当院で 2013 年以降に生体腎移植を行った 68 例を対象に、腎移植 1 年後の心機能の変化を検討した。
心機能は心エコーにて評価し、収縮能として LVEF(EF)、拡張能として E/E'(EE)を指標とした。1 年後の心機能変化と関連する因子について線形回帰を用いて解析した。
【結果】 患者背景は、移植時 44±14 歳、男 55%、PEKT14%、透析期間 3.4±5.0 年、糖尿病 16.2%であり、移植前 の EFは 65±8(中央値 61)、EE は 9.5±2.3(中央値 9.2)であった。
移植 1 年後の ΔEF は 2.7±7.0(中央値 2.5)、ΔEE は-0.3±3.3(中央値 0.2)であった。
心機能変化に関連する因子として、ΔEF では腎移植前の EF(β=-0.49[95%CI -0.68, -0.30])、ΔEE では腎移植前の EE(β=-0.72 [95%CI -1.03, -0.41]) が有意であった。
年齢、性、透析期間、糖尿病といった患者背景に加え、移植前の EFと EE の両方を同時に共変数として含む多変量解析においても、同様に有意な結果が得られた。
【結論】 収縮能、拡張能によらず、腎移植前に心機能低下があれば移植後に改善し、腎移植前に心機能が保たれている場合は変化に乏しい可能性が示された。
心機能低下患者であっても、周術期リスクを回避できれば、腎移植によって心機能回復を期待できるかもしれない。