腎移植内科研究会

腎移植内科研究会・第3回学術集会

Trichosporon asahii と多剤耐性緑膿菌という 重症感染症同時罹患を生じた腎移植患者の1例


◯宮内 隆政、小林 沙和子、山本 博之、藤丸 拓也、瀧 史香、二つ山 みゆき、長浜 正彦、小松 康宏
聖路加国際病院 腎臓内科

【背景】 Trichosporon 種は免疫抑制患者に生じる全身性疾患の原因として認識されている。 しかし、腎移植患者での報告は稀である。我々は腎移植患者で Trichosporon asahii と多剤耐性緑膿菌(MDRP:multi drug resistant pseudomonas aeruginosa)の同時感染を経験したので 報告する。

【症例】 ADPKD による末期腎不全で 6 年前に腎移植を受けたイスラエル人の 83 歳男性。2−3 日持続する発熱と右膝痛で入院。 バイタルサイン:BP:130/73mmHg、HR:90 回/分、BT:40℃、RR:18 回/分、SpO2: 98%(RA)。身体所見:右膝の熱感・腫脹を認め自動性・他動性の制限を認めていた。 血液培養、膝関 節穿刺で関節液培養検査を施行。その後、ピペラシリン/タゾバクタム投与を開始。血液培養検査では Trichosporon asahii が検出され、 関節液培養からは多剤耐性緑膿菌が検出された。抗生剤はメロペネム、アズトレナムに変更し、バンコマイシンを追加した。眼病変は確認できなかった。 重症感染である Trichosporon asahii と多剤耐性緑膿菌の同時感染であり、シクロスポリンとミコフェノールモフェチル (MMF)は内服中止し、プレドニンのみ内服継続した。 途中で偽膜性腸炎の合併は認めたが、6 週間の抗生剤加療は終了し回復した。

【まとめ】 Trichosporon 種は免疫抑制患者に生じる全身性疾患の原因として認識されている。血液悪性腫瘍患者での報告がほとんどであり、腎移植患者での報告は少ない。 今回 3 種類の抗生剤を用いて治療に成功した症例であり報告する。