腎移植内科研究会

腎移植内科研究会・第4回学術集会

腎移植後慢性期に認めた空洞病変を伴う肺結節陰影の一例


○坂井 薫
京都大学医学部病院 腎臓内科

症例は 50 歳代男性。原疾患は CNI 腎症。既往に急性骨髄性白血病(AML)。
X-17 年 AML に対して姉をドナーとする PBSCT 治療施行。GVHD 予防にタクロリムス内服加療開始。X-13 年より蛋白尿の出現、腎機能悪化を認めるようになり、X-12 年腎生検にて CNI 腎症と診断。X-2 年より腹膜透析導入。X 年 2 月に妻(+1 歳 HLA 4/6 ミスマッチ)をドナーに血液型不一致適合生体腎移植施行。 術後 DGF 認め、尿量回復まで術後 10 日間 HD 施行を要した。 POD 3M 生検で細胞性拒絶と診断され、ステロイドパルス(500mg×3 日間)施行。 POD 6M ST 合剤予防投与終了。 同時に 38℃発熱・CRP11・左耳痛認め、中耳炎と診断。 フロモックス内服とタリビット点耳薬化療されたが軽快せず、鼓膜切開排膿施行。その後症状消退し、 CRP 0.6 と改善。 POD 8M 軽い上気道炎症状あり。遷延する二次性副甲状腺機能亢進症(i-PTH240)精査に MIBI シンチ 撮影施行した所、右肺の空洞病変を指摘。再検の胸部 CT で右中葉に空洞を伴う結節影を確認。この時点での免疫抑制剤は PSL5mg Tac4mg MMF1500mg。 移植後慢性期の肺病変として、肺炎球菌・インフルエンザ菌による市中肺炎を第一の鑑別に、他には細 胞性免疫抑制下の結核菌・ノカルディア・放線菌・真菌・PCP・CMV 等の除外診断が必要となる。喀痰 培養検査・各種抗原検査・気管支肺胞洗浄検査施行するも病原微生物は検出されないまま、経時的に POD13M には空洞を伴う結節影は自然消退した。
これら経過中の POD 8.5M より持続的に尿中デコイ細胞を認め、MMF500mg/日まで減量を要した事や POD11M には左上肢に帯状疱疹発症した事から細胞性免疫抑制が過剰であり、肺野陰影は感染症と考えられた。 免疫抑制下の患者では呼吸器臨床症状が乏しいことや、典型的な画像所見を呈さないことも多いとされ、病原微生物の特定に難渋する症例もある。
今回、症例供覧しながら移植後肺感染症の鑑別診断について検討したい。