腎移植内科研究会

腎移植内科研究会・第4回学術集会

妊娠を希望した BK ウイルス腎症の既往がある腎移植後患者の一例


◯孫 楽、石井 太祐、宮内 隆政、松本 直人、伊藤 雄伍、瀧 史香、長浜 正彦、鈴木 髙祐、小松 康宏、中山 昌明
聖路加国際病院 腎臓内科

【症例】37 歳女性
【現病歴】 14 歳時に腎生検で IgA 腎症と診断された。29 歳、33 歳時に出産歴があり、以降腎機能低下が進行し、35歳時に母親からのABO適合生体腎移植を施行した。移植後3週間より尿BKウイルスPCR陽性、decoy 細胞陽性を認め、BK ウイルス腎症疑いに対し免疫抑制剤漸減したが、改善を認めなかった。Cre は 1.0 mg/dl 程度で推移した。移植後 2 か月尿蛋白増加(0.3-1 g/日)に対し施行した腎生検では有意な所見を認めなかった。無菌性膿尿の持続と Cre 1.4mg/dl への上昇を認め、移植後 11 か月(PSL 5mg、TAC 4mg、 MMF 1000mg 内服)再度腎生検施行し、BKウイルス腎症と診断した。さらに免疫抑制剤を PSL 2.5 mg、MMF 500mg に減量し、decoy 細胞の消失は確認したが尿 BK ウイルス PCR 陽性は持続した。移植後 1 年半で患者より妊娠の希望があり、再度腎生検施行し、BK ウイルス腎症・拒絶・再発性腎炎がないことを確認した。MMF を AZA に変更し、妊娠許可とした。許可 4 か月後(移植後 2 年 3 か月)に妊娠成立した。
【考察】本症例では慢性腎臓病(CKD G3b 相当)、妊娠そのものによる腎機能低下、免疫抑制剤変更に伴う再発性腎炎が妊娠のリスクとして挙げられる。また妊娠により BKウイルスが再活性化する報告もある。BK ウイルス腎症の既往がある腎移植患者において、妊娠を許可するにあたっての臨床的判断を文献的考察を加えて報告する。