腎移植内科研究会

腎移植内科研究会・第4回学術集会

Tac 徐放剤の分割投与で血中濃度が安定した生体腎移植の一例


○山家 公輔
信州大学医学部附属病院 腎臓内科

【症例】23 歳、女性

【現病歴】 原疾患ネフロン瘻、完全内臓逆位の症例。透析導入前に Cr 5.7 mg/dl で ABO 不適合生体腎移植(ドナー A+、レシピエント O+)を施行した。免疫抑制薬は Tac、MMF、PSL、リツキシマブ、バシリキシマブを用い、術前に DFPP2 回+PE1 回施行した。移植 4 週間前より Tac 徐放剤、MMF を開始した。5 日前には Tac 徐放剤 10 mg でトラフ値 8.1 ng/ml と目標値となったが頭痛を認めたため、C4を確認したところ 36 ng/ml と異常高値を認めた。また C1-2 にピークがあり、血中濃度が早急に低下することが判明した。Tac 徐放剤 5 mg を 1 日 1 回投与にて AUC が目標値となり、術前までの維持量とした。術直後の腎機能発現は良好であったが、術後 8 日目に Cre 上昇と抗 A 抗体上昇を認め、拒絶反応を疑いミニパルス、PE、リツキシマブで改善を認めた。Tac 徐放剤 1 日 1 回投与で血中濃度低値の時間が長くなることが免疫的リスクと考えられた。1 回投与量の増量ではピーク値が高値となってしまうため、Tac 徐放剤 1 日 2 回投与に変更した。その後は良好な血中濃度推移が得られ、安定した経過で Cre1.0 mg/dl で退院 となった。

【考察】 Tac の吸収能は患者ごとに幅がある。Tac 徐放剤は通常 1 日 1 回投与であるが、血中濃度が不安定な患者には分割投与が有用な可能性がある。