腎移植内科研究会

腎移植内科研究会・第4回学術集会

腎移植後 1 年の IgA 腎症に対してステロイドパルス療法が有効であった一例


○山城 葵1、酒井 敬史1、福永 継実1、小島 亜希1、井上 暖1、小松 秀平1、大島 泰斗1、広瀬 剛1、小島 糾1、冨安 朋宏1、吉川 憲子1、山田 宗治1、横山 卓剛2、木原 優2、今野 理2、岩本 整2、尾田 高志1
1東京医科大学八王子医療センター 腎臓病センター 腎臓内科・血液浄化療法室、2同 腎臓外科

【症例】54 歳男性

【主訴】腎機能低下

【現病歴】 中学時の学校健診で尿蛋白陽性を指摘されるも受診歴なく腎生検は施行されていなかった。2013 年(50 歳時)会社健診で蛋白尿の増加を指摘され他院で慢性腎不全と診断された。2015 年 7 月に緊急血液透析導入ののち 2015 年 8 月に腹膜透析に移行。2017 年 1 月、妻をドナーとした生体腎移植を受けた。移植後血清 Cr は 1.3-1.5 mg/dL 程度で安定し尿所見を認めていなかったが、2017 年 10 月頃から血尿、蛋白尿が出現。2018 年 2 月血清 Cr が 1.92 mg/dLまで上昇したため、当科紹介となり精査加療目的で入院と なった。

【検査所見】 尿沈渣:RBC >100 /HPF(糸球体型 中等度)。尿蛋白定量:3.35 g/gCr。血液生化学:BUN 21.7 mg/dL、Cr 1.83 mg/dL、Alb 3.8 g/dL、CRP 4.86 mg/dL。

【経過】 2018年1月に実施した移植1年後のプロトコール腎生検では拒絶反応を示唆する所見はみられなかったが、12 個中 1 個の糸球体に細胞性半月体形成を伴う活動性の腎炎所見を認めた。蛍光抗体染色を追加実施したところ IgA および C3 がメサンギウム領域に陽性であり IgA 腎症と診断した。入院時検査で炎症反応陽性であったが、活動性感染巣は明らかでなかったためステロイドパルス療法(mPSL500mg)を実施。後療法として mPSL を 4mg から 12mg へ増量し、他の免疫抑制薬であるシクロスポリン 120mg およびミゾリビン 300mg は継続とした。尿所見および血清 Cr 値は改善傾向を示したため、ステロイドパルスは有効と判断し第 10 病日から 2 クール目のステロイドパルスを施行した。尿蛋白 0.3 g/gCr、血清 Cr 1.63 mg/dLまで改善し退院となった。

【結語】 原疾患不明の腎不全で移植されたが、移植腎組織の経時変化の解析から IgA 腎症の再発が考えられステロイドパルス療法が有効であった一例を経験したので、文献的考察を加え報告する。