腎移植内科研究会

腎移植内科研究会・第1回学術集会

Donor specific antibody (DSA)陽性生体腎移植においてfocal segmental glomerulo-sclerosis (FSGS) の再発と考えられた1例


○松尾 研1、森 典子1、大川 高生1、山本 琢巳1、西尾 治臣1、澤谷 朝子1、伊藤 健太1、 村上 雅章1、北川 晃子1、松尾 陽子1、田中 聡1、長濱 寛二2、西尾 恭規2
1静岡県立総合病院 腎臓内科、2静岡県立総合病院 泌尿器科

症例:29歳男性。既往歴:出生時異常なし。輸血歴なし。渡航歴なし。20歳で尿蛋白を指摘され、21歳時に近隣総合病院で精査され問題なく終診となった。家族歴:腎疾患なし、糖尿病・高血圧なし。喫煙歴:20歳〜29歳 1日10本。現病歴:27歳時に浮腫と血圧上昇、食思不振と倦怠感にて近医受診したところCr 14.7 mg/dlに上昇していたため近隣の総合病院へ搬送され翌日から緊急透析が施行された。腹部CT画像にて腎萎縮なく、採血にてANCA陰性、抗GBM抗体陰性、抗核抗体陰性、眼底には高血圧性眼底出血を認め、腎不全の原因検索のため腎生検を施行されIgA腎症の末期と診断された。その約2ヶ月後に同病院にて血液透析の導入となり、その2年後の2014年10月本院に紹介され、60歳の父親をドナーとする血液型O型からA型への適合不一致生体腎移植を行った。HLAはone haplotype identical、FCXMでB細胞陽性、DQ7に対する抗ドナー抗体価がMFIで4444であったため血漿交換・IVIGとrituximab 200 mgを2回投与後、MFI 17まで低下しmPSL、MMF、TAC、basiliximabの投与下で移植を施行した。直後より透析を離脱し7PODのCr 1.26 mg/dl、尿量3200 ml、21POD Cr 1.00 mg/dl、尿蛋白180 mg/dayにて退院となった。しかし28PODに尿蛋白465 mg/day、98PODには3492 mg/dayまで上昇したため腎生検を施行した。糸球体は30個得られ全節性硬化糸球体を1個、そして管内に泡沫細胞を伴う分節性病変を1個の糸球体に認めた。免疫蛍光染色では有意な陽性所見を認めなかった。以上よりFSGSと診断し108PODより血漿交換、rituximab 200mg投与にて174PODのCr 1.33 mg/dl、尿蛋白451 mg/dayである。まとめ:原疾患IgA腎症での紹介であったが移植後ネフローゼを発症し、腎生検にてFSGSと診断した。もともとDSAに対し脱感作療法として血漿交換を施行したりrituximabを投与したにも関わらずFSGSの再発を認めており、本患者に対する治療に関して文献的に考察する。