日本腎移植内科研究会

腎移植内科研究会・第1回学術集会

健常人(移植ドナー)、糖尿病性腎症及び非糖尿病性腎症における各種推算糸球体濾過率の有用性の比較・検討


○津田 昌宏1、石村 栄治1、上殿 英記1、安本 真理1、大野 良晃1、仲谷 慎也1、一居 充1、 越智 章展1、内田 潤二2、森 克仁1、絵本 正憲1、仲谷 達也2、稲葉 雅章1
1大阪市立大学大学院医学研究科 代謝内分泌病態内科学、腎臓病態内科学
2大阪市立大学大学院医学研究科 泌尿器病態学

【背景】2009年736例のイヌリンクリアランス(Cin)を元に、日本人の推算糸球体濾過量の計算式が発表された。移植ドナーではeGFR¬crがGFRを過小評価すという報告がある(Kakuta T,et al.CEN14:63–67,2010)。また我々は糖尿病性腎症において血糖コントロールが不良になると、eGFRがGFRを過大評価していることを報告した(Diabetes Care 37:596, 2014)。糖尿病性腎症患者を対象とした腎移植が増える中、ドナー及びレシピエントの腎機能をより正確に評価する必要がある。しかし、健常人、糖尿病患者、非糖尿病患者における各種eGFRの有用性の比較・検討した報告は少ない。
【目的】 健常人、糖尿病患者、非糖尿病患者の各種eGFR(eGFRcr、eGFRcys)の有効性を検討した。
【方法】Cinと各種eGFRの相関関係、一致率を求めた。CinとeGFRの比率と各種臨床指標との相関関係を求め、CinとeGFRの乖離する要因を検討した。
【対象】 移植ドナー及び、糖尿病患者、非糖尿病患者の各々40例。年齢 57±14才。男性49名。
【結果】 移植ドナーではeGFRはCinとの相関関係、一致率共に弱く (eGFRcr:r=0.492、p=0.0017、ICC=0.363、eGFRcys:r=0.354、p=0.0644、ICC=0.414)、eGFRcrはGFRを過小評価、eGFRcysはGFRを過大評価していた。糖尿病患者ではeGFRとCinは強い相関関係を認めたが一致率が低く、eGFRはGFRを過大評価していた(eGFRcr:r=0.691、p<0.0001、ICC=0.691、eGFRcys:r=0.609、p<0.0001、ICC=0.691)。非糖尿病患者ではいずれのeGFRもCinと強い相関関係、一致率(eGFRcr:r=0.913、p<0.0001、ICC=0.883、eGFRcys:r=0.815、p<0.0001、ICC=0.811)であった。
【考察】 移植ドナーでは、eGFRの一致率が低く、有効性が低い。eGFRcrはGFRを過小評価していることは既報通りであったが、eGFRcysは過大評価していた。また、eGFR/Cinと各種臨床指標は相関せず、移植ドナーでeGFRとCinの一致率が低い要因は特定できず、腎移植ドナーの腎機能評価にはCinの測定が望ましいと考えられた。
非糖尿病患者ではeGFRは有効性が高い。eGFRが非糖尿病性腎疾患を中心に作成されたことが要因であると考えられた。
糖尿病患者ではいずれのeGFRもGFRを過大評価していた。eGFR/CinとHbA1cが有意な正の相関関係にあり、HbA1cが上昇すると、eGFRがGFRを過大評価していることを報告した。
【結語】疾患毎に、各種eGFRの有効性が異なり、注意が必要である。