腎移植内科研究会

腎移植内科研究会・第1回学術集会

腎臓移植レシピエントの菌血症


○伊藤 健太1、後藤 憲彦2、二村 健太2、岡田 学2、山本 貴之2、辻田 誠2、平光 高久2、 鳴海 俊治2、冨永 芳博2、渡井 至彦2
1静岡県立総合病院 腎臓内科、2名古屋第二赤十字病院 移植内分泌外科

【目的】腎臓移植レシピエントに合併する菌血症の特徴、菌血症発症後の予後を明らかにすること。
【方法】2002年1月1日から2014年3月31日までに名古屋第二赤十字病院、移植内分泌外科で腎移植術を施行した902例のレシピエントの内、移植時の年齢が18歳以上であった853例(生体腎 789例、献腎 64例)を対象に2014年8月31日までの期間における菌血症の有無を評価した。真の菌血症と考えられた62例(生体腎 59例、献腎 3例)、88回(生体腎 83回、献腎5回)の菌血症を市中発症と院内発症に分け、感染部位、原因菌、初期抗菌薬の使用が適正であったか、菌血症後の死亡、腎予後などを後方視的に調査した。
【結果】腎臓移植レシピエント全体の7.3%に菌血症を認め、約24%の症例は複数回菌血症を発症した。感染部位としては単回、複数回菌血症症例共に尿路が最多で50%以上を占め、原因菌は大腸菌が最多であった。菌血症発症後原因菌判明までの間に経験的抗菌薬は全体で約60%が適正に使用されていたが、腎臓移植レシピエントの12.9%が死亡し半数以上が感染症による死亡であった。菌血症後1年以内に腎生検で確定された急性拒絶反応を8% (5例)に認め、単回の菌血症を発症した2例は共に尿路感染症、複数回菌血症を発症した3例では、合計8回の菌血症中7回が尿路感染症であった。
【考察】腎臓移植レシピエントに合併する菌血症の特徴、予後を明らかにできた。腎臓移植レシピエントの診療において今回のような感染症の疫学を把握し、感染症診療の質をより充実させることが長期移植腎機能へ与える影響に関して今後の研究が望まれる。