日本腎移植内科研究会

腎移植内科研究会・第1回学術集会

先行的腎移植実施率と当院腎センターにおける腎代替療法説明の効果


○高澤 亜美子、松木 聡子、金川 清香、徳元 しのぶ、笠井 愛、長谷川 正宇、藤丸 拓也、長浜 正彦、小松 康宏
聖路加国際病院 腎センター

【背景】先行的腎移植(以下、PEKT)は透析を経ての腎移植に比べて移植腎生着率、生存率が良好であり、PEKT施行のためにCKD早期より腎代替療法(以下、RRT)説明を実施し移植を選択できるようにすることが望ましい。当院腎センターでは2006年より慢性腎臓病外来にて看護師がRRT説明を行い、2011年6月より腎臓内科医が移植チームの中心となり生体腎移植を開始した。2015年5月現在までの腎移植22例中、11例(50%)がPEKTであった。
【目的】PEKT実施率とRRT説明の効果を考察する。
【RRT説明の方法】当外来ではRRT説明をCKD,HD,PD,移植看護の知識と経験が豊富な看護師が行う。CKDステージ5でHD,PD,移植の具体的な説明と見学を4回、患者・家族の受け入れ状況等を査定しながら進める。患者・家族が納得してRRTを選択し、円滑に導入できることを目指している。
【結果】2011年6月より2015年1月現在まで当院で生体腎移植を実施した22例中、当外来初診時に14例がRRT未導入であった。そのうち12例にRRT説明を行い、9例がPEKTに至った。9例のRRT説明開始時の平均eGFRは14.0ml/min/1.73㎡、移植前にHD導入となった3例のRRT説明開始時の平均eGFRは9.0 ml/min/1.73㎡であった。RRT説明開始からPEKTに至った期間は平均13.5ヶ月(範囲6ヶ月~25ヶ月)であった。
【考察】より早期からRRT説明がPEKT実施率に寄与する可能性が示唆された。早期に移植を含むすべてのRRTの情報を得られることで、その中から移植を選択し身体的余裕をもって移植前準備ができたと考える。また、RRT説明開始時期がCKDステージ5に至っても、適正なRRT説明を実施することでPEKTを可能にするとも考えられる。
【結語】PEKTを推奨するために、早期RRT説明はもちろん、説明者の経験や知識、適正な説明内容など質の向上と、特に十分な腎移植の情報提供が重要である。