腎移植患者の食生活状況に関する検討
2女子栄養大学栄養学部
3慶應義塾大学病院看護部
4東京歯科大学市川総合病院泌尿器科
【目的】腎移植患者の移植前後の身体状況、食生活の変化および現在の食事摂取状況を調査する。【方法】対象は慶應義塾大学病院泌尿器科に通院中の腎移植後患者62名(52.3±11.5歳 男女各31名)とした。2013年の外来診察時に腎移植前後の身体状況および食事に関する意識や満足度の調査を実施した。さらにBDHQによる食事調査を実施した。【結果】患者のe-GFRは42±16ml/min/1.73m2、血清Crは男性1.60±0.61㎎/dl、女性1.40±1.21㎎/dl、尿蛋白陽性者は30%であった。79%(49名)の患者に降圧薬が処方されていた。腎移植後に無症状で社会生活が可能だった者は19%から71%と有意に増加した(p<0.001)。むくみ、疲労感、皮膚のかゆみ、動悸の症状が改善した者がそれぞれ79%、77%、71%、63%であった。食事に不満があった者は79%から4%と有意に減少した(p<0.001)。カリウム、塩分、たんぱく質、リン・カルシウムの摂取に注意していた者は、それぞれ56%から8%、55%から21%、50%から16%、35%から3%と有意に減少した(いずれもp<0.001)。1日の栄養素等摂取量はエネルギー29±8kcal/kg、たんぱく質1.1±0.4g/kg、脂質エネルギー比28.5±5.2%、食塩相当量は9.9±3.6gであった。【考察】腎移植後に身体活動・症状の改善、食生活の満足度の向上が示された。食事ではカリウム、塩分、たんぱく質、リン・カルシウムの摂取を注意している者は有意に減少し、これらが食生活の満足度に繋がっていると考えられた。しかし移植後の長期生存や長期生着には残存腎機能、原疾患などに応じた栄養管理の必要性が示唆された。