移植腎生検後腎動静脈瘻(AVF)の発生と治療についての検討
【はじめに】 自己腎生検同様に移植腎生検でも一定頻度で合併症が生じる。生検後AVFは移植腎機能障害や肉眼的血尿を呈する合併症であり、比較的頻度は高いと考えられる。当院で経験したAVF症例の特徴と対応について報告する。
【症例】 2009年から当院で施行した腎移植症例連続113名で検討した。当院はエコーガイド下で16ゲージ針を使用している。AVFを発症した症例は7名(6.2%)であった。3名が移植後2週間以内のエピソード腎生検であり全例AMRであった。その他3名が移植後2、12か月後のプロトコール腎生検、1名は移植直後よりエコーでAVFが確認され1時間生検で生じたものと考えられた。プロトコール腎生検の3名中2名が肉眼的血尿を呈さずAVF発見までに3、10か月を要した。治療は4名が肉眼的血尿あるいは腎機能障害が疑われ血管内治療(IVR)を行った。IVRを施行した4名中、AMRで移植後HDを行っていた2名を除くと、IVR後に有意に腎機能は改善した。血尿はないがAVFによって腎機能障害を呈していると考えられる2名については早急にIVRを行う予定である。1時間生検で生じたAVFに関しては血尿や移植腎機能障害はなく自然閉鎖を期待して経過観察中である。
【考察とまとめ】 当院で経験したAVFは移植後早期の拒絶症例で多く、1時間生検でもAVFが発症していた。肉眼的血尿を呈さない症例では発見が遅れた傾向にある。生検後AVFは0.8~9.6%で発生する。このバラつきは検出努力や生検針ゲージの差などが影響していると考えられる。AVFの自然閉鎖率は43~77%程度と言われているが、肉眼的血尿や移植腎機能障害、仮性瘤形成などの症候性の場合には、IVRの高い安全性や成功率から積極的治療をする傾向にある。今後さらなる内科医の移植医療への参画にあたり、移植腎生検を数多くの内科医が施行すると考えられる。安全な手技と生検後のフォロー体制、またAVFが発症した際の対応については熟知しておく必要があるため文献的考察を交えて報告する。