熊本地震における腎不全患者の問題とその対応
今回我々は、平成28年4月に最大震度7の地震を2回経験した。地震発生2週間後の現在も震度1以上の地震が1000回を超え、避難所で生活している人も2万人を超えている。当院は、県の災害拠点病院であり、国内外の救援活動に力を入れてきたため、定期的な訓練や災害への備えは行ってきた。しかし、今回自分たちも被災した中で診療を行わなければならない大変さを身をもって感じた。
当院では維持血液透析患者約90名、腹膜透析患者30名、腎移植患者180名をフォローしている。地震直後には病院もライフラインが途絶え、特に断水は1週間以上に及んだ。緊急を要したのは血液透析患者で、他施設への患者の移送や断水による透析時間の短縮を余儀なくされた。透析不足による高カリウム血症や心不全によって緊急透析が必要な症例もあった。移植患者においては、避難や交通状況悪化による通院困難に伴う内服薬切れが最も大きな問題であったが、当院の外来機能が回復するまではERによる処方のみの対応を行い、幸い内服が中断した患者はいなかった。震災の影響で一時的に腎機能が悪化した症例もあったが、環境の改善により回復した。入院は肺炎が1名のみであった。
通院困難な患者において、他の受け入れ可能な施設を探す際、最も迅速で有効であったのは移植医のメーリングリストであった。このような医療者間のネットワークのほか、患者の安否確認や当院の外来受け入れ状況の連絡など、インターネットの活用範囲はもっと広がる可能性が示唆された。
今回、改めて移植が災害に強い腎代替療法であることがわかった。
腎代替療法のモダリティー別の問題点を振り返るとともに、災害弱者である腎不全患者を守るため準備できることを、今回の経験をもとに考えたい。