日本腎移植内科研究会

腎移植内科研究会・第2回学術集会

バイオマーカーによる腎移植後IgA沈着症の非侵襲的診断の検討


○祖父江理1、 鈴木仁5、守時政宏1、西島陽子1、串田吉生2、安岐康晴3 、原大雅3、筧善行4
1香川大学医学部附属病院 腎臓内科、2同 病理部、3同 地域医療再生医学、4同 泌尿器・副腎・腎移植外科、5順天堂大学 腎・高血圧内科

【背景】腎移植後は定期プロトコール移植腎生検により、検尿異常を伴わない再発あるいはDe novoの『IgA沈着症』を診断する機会が多い。近年、糖鎖異常IgA1等の血清学的IgA活動性定量による自己腎IgA腎症の非侵襲的診断が報告され、移植腎への応用が期待されている。

【方法】対象は2010年から2013年に当院にて生体腎移植を行った連続27例のドナー・レシピエントで、腎移植前、6、12か月後に血清学的IgA活動性定量を、移植後1, 3年後に定期腎生検にてIgA沈着症を前向き観察研究にて検討した。

【結果】27例中10例に移植後3年以内のIgA沈着症(IgA沈着群)を、27例のドナー中8例に持込みIgA沈着症を認めた。IgA沈着症は全例検尿異常を伴わなかった。血清糖鎖異常IgA1、抗糖鎖異常IgA1-IgG、糖鎖異常IgA1-IgG免疫複合体の3項目ともにIgA沈着群、沈着なし群、持込みIgA沈着ドナー群の3群間で有意差は認めなかった。自己腎におけるIgA腎症検出モデルを移植腎に適応すると、AUC 0.65、感度88%、特異度60%の検出度であった。また、1年目にはIgA沈着症を認めるものの3年後には消失した症例やC3の共染色を認めない症例では1年時の免疫複合体濃度は低い傾向にあった。

【結論】移植後IgA沈着症は自己腎IgA腎症とは血清学的に異なる活動性を持つ可能性が考えられた。糖鎖異常IgA1-IgG免疫複合体定量は腎移植後IgA沈着症の診断には実用的ではないが、予後予測に有用である可能性が示唆された。