原疾患が糖尿病性腎症である腎移植例の移植腎予後と、糖尿病性腎症再発例における組織学的所見の進展
【背景】定期的な組織評価を行う移植腎では、糖尿病性腎症(Diabetic Nephropathy:DNP)再発時の組織学的進展の評価が可能と考えられる。
【目的】DNPを原疾患とする腎移植例の移植腎予後とDNP再発例における組織学的所見の進展を評価する。
【方法】1989年〜2011年に東京女子医科大学泌尿器科で腎移植を行ったDNPを原疾患とする76例の生存率と腎生着率および、DNP再発例における組織学的所見を評価した。
【結果】DNPを原疾患とする移植例の生存率は10年で80.2%、生着率は10年で74.4%であった。移植腎廃絶の原因は、death with functioning graft (DWFG)が54.2%、慢性拒絶反応37.5%、その他8.3%で、DNP再発による移植腎喪失は認めなかった。DNP再発例は15.9%であり、診断までの期間は中央値で62ヶ月であった。移植後早期にみられた所見は細動脈硝子化、メサンギウム基質拡大および糸球体門部血管増生であった。
【結論】DNPを原疾患とする腎移植における生存率及び生着率は低く、移植後10年で80.2%および74.4%であり、移植腎喪失の主たる原因はDWFGであった。DNP再発率は15.9%であり、5年程度で早期再発が生じるものの、移植腎機能に与える影響は限定的と考えられた。