腎移植後に再導入となった透析患者の予後についての検討
【背景・目的】海外の先行研究では、腎移植歴のない透析患者(TN)と比べ、腎移植後再導入となった透析患者(TF)の生命予後は良好との報告がある一方で、移植待機のTNと比較するとTFは予後不良という報告もある。しかし国内ではTFの予後についての検討はない。本研究では、日本の透析患者を対象に、TFとTNの予後を比較した。
【方法】2012年末にJSDTレジストリに登録された298,062名を対象に、1年間の総死亡(ACD)、心血管死亡(CVD)、感染死亡(IRD)について、TF(n=2,568)とTN(n=295,494)を比較した。解析としてCox回帰を行い、年齢、性、透析年数、透析モダリティ、糖尿病、心血管病の既往、検査値で調整した。また、治療選択に伴う交絡の影響を考慮し、傾向スコア(PS)にてマッチングした解析(n=3,488)を行った。
【結果】患者背景にて、TFはTNに比べ年齢は若く(53.5 ± 12.0歳 vs 67.5 ± 12.5 歳)、透析期間は長く(14.9 ± 11.0年 vs 7.6 ± 7.3年)、糖尿病・心血管病合併の頻度は低かった(糖尿病4.4% vs 37.4%、心血管病14.8% vs 28.5%)。TFのACD、CVD、IRDに対する調整ハザード比(95%CI)は、0.84(0.65,1.07)、0.65(0.40,1.00)、1.33(0.84,2.00)であった。一方PSを用いた解析では、0.82(0.58,1.13)、0.56(0.31,0.96)、1.49(0.77,3.00)であった。
【結論】TFはTNと比べ総じて死亡リスクは高くなく、CVDリスクは同等ないしは低かった。これよりCVDの観点から透析再導入後も腎移植が有益である可能性が示唆された。