腎移植患者を対象としたGlucocorticoid induced transcript 1 (GLCCI1)遺伝子多型と移植後高血圧に関する検討
【背景】高血圧は、進行した慢性腎不全では頻度の高い合併症の1つであるが、腎移植後においても同様である。一般に腎移植を受けたレシピエントのうち、40-60%の症例に移植後高血圧が起こり、その原因の1つに薬剤性が挙げられ、カルシニューリン阻害薬やステロイド(グルココルチコイド)が関与する。このうち、グルココルチコイドは全身性の血管収縮を引き起こすことで高血圧を来すことが知られている。しかし、腎移植後早期にグルココルチコイドは減量するため、慢性的な高血圧の原因とはならないという報告もあり、グルココルチコイドと移植後高血圧の関連について明確な結論は出ていない。
【目的】グルココルチコイド作用に関わるglucocorticoid induced transcript 1 (GLCCI1)の遺伝子多型 (rs37972)と、移植後高血圧の関連について検討した。
【対象および方法】対象は当院で同意の得られた腎移植症例(N=50)とし、移植後3年目の時点での臨床データを元に解析した。遺伝子多型は、患者の末梢血より抽出されたDNAを用いて、PCR法によって増幅し、シーケンス解析を行った。移植後3年目の時点で降圧剤が投与されているかどうかをエンドポイントとし、移植後高血圧に関連する臨床病理学的因子を含めて検討した。
【結果】rs37972がG/G (minor) typeと比較し、A/G (hetero)もしくはA/A (major) typeでは、腎移植後3年目の時点で、移植前と同様に降圧剤による投薬治療を受けている割合が有意に高かった(p<0.001)。
【結論】腎移植後患者において、GLCCI1遺伝子が移植後のレシピエントの血圧調整に関わっている可能性が示唆された。