腎移植内科研究会・第2回学術集会
生体腎移植患者に発症した血管内大細胞型B細胞リンパ腫の一例
1九州大学大学院病態機能内科学、2同 病態修復内科学、3同 臨床腫瘍外科学
症例は40歳代の男性。多発性嚢胞腎を原疾患とする末期腎不全のため腹膜透析を導入し、1年の透析歴の後、母親をドナーとする血液型適合生体腎移植術を受けた。12ヶ月定期生検で急性T細胞関連拒絶の所見を認め、ステロイドパルス療法が追加されている。移植後1年4ヶ月頃より大腿近位部の発赤腫脹、両下肢浮腫、および発熱を認め、4月に精査加療目的に当科に入院した。血液検査で低アルブミン血症(Alb 2.8g/dL)と炎症反応(CRP 2.93mg/dL)を認め、可溶性IL-2受容体は 6424.0U/mlと高値であった。PET-CTでは腹部から両側大腿部にかけて皮下にFDGの集積を認めた。右鼠径部の皮膚生検で血管内大細胞型B細胞リンパ腫と診断し、血液内科でR-CHOP療法を開始した。浮腫や発熱などの全身症状と血液検査の異常は速やかに改善し、R-CHOP療法を6コース終了した現在、移植腎機能障害その他の合併症を認めていない。血管内大細胞型B細胞リンパ腫はリンパ節腫大や腫瘤形成を認めず診断に苦慮する稀な組織型であり、腎移植患者における報告も認めない。永続的に免疫抑制療法を受ける腎移植患者に皮膚の発赤腫脹を伴う原因不明の浮腫を呈した場合、本症を疑いランダム皮膚生検を含む精査が必要である。