腎移植内科研究会

腎移植内科研究会・第3回学術集会

Coral reef aorta により腎機能悪化を来した腎移植後患者の 1 例


◯能瀬 勇馬
一般財団法人住友病院 腎センター

症例は 68 歳、女性。若年時から蛋白尿を認め、原疾患は不明であるが、緩徐に腎機能低下を来し X-5 年に血液透析を導入した。 同年 10 月に夫をドナーとして ABO 適合生体間腎移植を施行した。
その後血清 Cre 0.9-1.2mg/dLで推移していたが、X-1 年頃から緩徐に Cre が上昇し、Cre 1.2-1.4mg/dLと増悪傾向 を認めた。 ABI(足関節上腕血圧比)の低下も認めた。入院の上精査を行ったところ腹部大動脈の石灰化の進行、それによる血管内腔の狭窄があり、ステントを留置したところCre, ABI共に改善が得られた。 移植腎の動脈吻合部に狭窄は認められなかった。
Coral reef aorta は腹部大動脈の非常に強い石灰化と内腔の狭窄により、間欠性跛行や腹部症状、 腎血管性高血圧を来たすものと報告されているが、それにより腎機能低下を認めたという報告は少ない。 また、本症例は移植腎の動脈吻合部よりも近位の大血管狭窄による腎機能低下を来しており、稀な症例であると考えられる。高齢での腎移植であることも考慮しながら、 文献による報告を交えて考察する。