腎移植内科研究会

腎移植内科研究会・第3回学術集会

当院における腎移植患者の悪性腫瘍発生状況・ リスク・早期発見の取り組みについて


◯小口 英世、兵頭 洋二、河村 毅、村松 真樹、板橋 淑裕、高橋 雄介、二瓶 大、濱崎 祐子、 大橋 靖、宍戸 清一郎、酒井 謙
東邦大学医学部 腎臓学講座

本邦における腎移植レシピエントの死亡原因として悪性腫瘍は第 3 位に位置付けられており、悪性腫瘍の発生状況やリスク因子の把握、対策は重要な課題である。 当院における悪性腫瘍発生状況・リスクについて述べる。
1975 年より 2017 年 1 月までに当院で施行した腎移植 844 例のうち、追跡調査が可能であった 841 例を対象とし調査を行った。 悪性腫瘍の発生率は 841 例中、53 例(6.3%)に 54 回発生した。悪性腫瘍発生時年齢は 51.7±13.5 歳、悪性腫瘍発生までの期間は 112.0±72.8 月、癌死は 11 例(20.8%) であった。
さらに悪性腫瘍発症群、非発症群間での患者生存率、移植腎生着率を 5 年、10 年、20 年と追跡した。患者生存率は悪性腫瘍発症群が非発症群に比して悪く(Log-rank P=0.0103)、 移植腎生着率は 悪性腫瘍発症群が非発症群に比して有意差は認めなかった(Log-rank P=0.0765)。 悪性腫瘍発症のリスク因子について検討を行ったところ、多変量解析において、移植腎年齢と献腎移植が、悪性腫瘍発生の独立した危険因子であった(P<0.01、P=0.0101)。
また、当院ではプロトコール生検に合わせて、悪性腫瘍早期発見のための定期精査(1 年、3 年、5 年、 7 年)を行い、外来レベルで定期的な検診をうけるように指導を行っている。 移植後悪性腫瘍の早期発見のため、当院で行っている取り組みと、悪性腫瘍発見状況についても示したい。