腎移植内科研究会

腎移植内科研究会・第4回学術集会

腎移植後感染症の実際


○伊藤 健太1、松尾 研1、森 潔1、公平 直樹2、森 典子1
1静岡県立総合病院 腎臓内科、2同 泌尿器科

【目的】腎移植レシピエントに合併する感染症の実際の特徴を明らかにすること。
【方法】2008年1月1日から 2017年12月31日までに当院で腎移植術を施行した 111 例 (生体腎80例、献腎 31 例)を対象とし、腎移植施行日から 2018 年 3 月 31 日までの期間において発症した、内服もしくは静脈内投与による薬物治療を必要とした感染症を後方視的に抽出した。予防目的の場合は除外した。 感染症の種類、発症時期、原因菌、感染症発症後 1 年以内の死亡、グラフトロス、急性拒絶反応の有無 を調査した。
【結果】341 エピソードの感染症(院内発症 93、市中発症 248)を認めた。市中発症 248 エピソードの内 102(41.1%)が入院加療となった。14 例(12.6%)には感染症の合併を認めなかった。発症時期で分けると、頻度が高い順に、移植後 1 ヶ月までは尿路、CMV、HSV、SSI、CDI、移植後 1-6 ヶ月の間は CMV、尿路、BKV、呼吸器、HSV/VZV/発熱性好中球減少症、移植後 6 ヶ月以降は尿路、呼吸器、インフルエンザ/VZV、CMV、蜂窩織炎、の順であった。それぞれの期間において、これらトップ 5 の疾患が約 70-80%を占めた。免疫抑制に関係した感染症は CMV を除くと約 15%を占めた。因果関係の断定は困難だが、感染症発症後 1 年以内の死亡は 2 例、グラフトロスは 6 例、急性拒絶反応併発は 18 例(臨床 判断のみで加療した症例を含む)であった。
【考察】腎移植レシピエントに合併する感染症の特徴を把握できた。腎移植レシピエントであっても、免疫抑制に関係しない一般感染症への理解を忘れてはならない。腎移植後感染症と腎移植レシピエントの予後との関連性について更なる研究が望まれる。