日本腎移植内科研究会

腎移植内科研究会・第4回学術集会

生体腎移植を見合わせた 2 例の検討


○大沢 紘介、村上 穣、降籏 俊一、池添 正哉
佐久総合病院佐久医療センター 腎臓内科

【症例 1】 67 歳女性、レシピエント、血液型は O 型。もともと sCr 0.95mg/dL前後で推移していた。2015 年、低カ リウム血症を伴う高血圧の原因が原発性アルドステロン症と判明し、同年 12 月腹腔鏡下右副腎摘出術が施行された。術後、2016 年 5 月 sCr 1.86mg/dLと腎機能の増悪を認めた。同年 6 月当科外来を紹介受診、尿蛋白は 150mg/dL 未満、尿潜血は認めず、ベースの腎疾患として良性腎硬化症が疑われた。また、副腎が摘出されたことによる血圧および腎血流低下が腎機能悪化の原因と判断した。2017 年 6 月 sCr 2.24mg/dL と悪化した。腎代替医療として、65 歳の夫(AB 型)をドナーとした生体腎移植を希望された。ドナーに特記すべき異常は認めなかった。しかし、レシピエントの心エコーにて TRPG 65.3mmHg の重症肺高血圧が疑われ、精査の結果、特発性肺動脈性肺高血圧症の診断となった。腎移植の精査はいったん中止し肺高血圧症の治療を優先することにした。マシテンタン(エンドセリン受容体拮抗薬)が開始になり、TRPG 32.3mmHg と改善し、循環器内科からは全身麻酔に耐えうる心臓と評価されている。

【症例 2】 63 歳男性、ドナー、血液型は A 型。レシピエントは、IgA 腎症による慢性腎臓病のため、2013 年より 血液透析が導入された 63 歳女性。夫をドナーとした生体腎移植術を希望され 2017 年当科外来を受診。 ドナーは eGFR 52ml/min/㎡と marginal donor としての基準は満たさなかったが、24Ccr 131.7ml/min と腎機能は問題ないことを確認した。2004 年胸部 CT の健診で異常陰影を指摘され、肺非結核性抗酸菌症の診断となったが詳細は不明であった。当院で施行した胸部 CT でも上記疾患が疑われ、喀痰検査を施行 したところ Mycobacterium avium が検出された。排菌を認めているため、「活動性のある感染症」に罹患していると判断し、生体腎移植のドナーとして不適と判断した。現在、抗結核薬による治療を継続している。

上記 2 症例は、今後腎移植が可能かどうか、タイミングなどにつきご意見を賜りたく提示させていただきます。