腎移植内科研究会

腎移植内科研究会・第4回学術集会

多剤耐性結核菌感染の既往にて腎移植を中止した高齢の腎不全症例


○森島 淳之、村津 淳、奥手 祐治郎、南 知宏、三木 渉、寺嶋 謙、米田 傑、阪口 勝彦
一般財団法人住友病院 腎センター

レシピエントは 77 歳男性。40 年来の糖尿病にて X-1 年 9 月に血液透析導入。腎代替療法の選択時より 血液透析導入後の腎移植を希望されており、ドナー候補であるいとこ男性(64 歳)も移植を積極的に希望されたため、レシピエントは高齢であったが、いとこをドナーにした生体腎移植(ABO 適合不一定(O+ → A+))に向けて検査を進めた。
レシピエントは、X-28 年に肺結核に罹患して 4 年加療し、X-24 年に肺切除をされた既往があり、その後の再発は無かった。呼吸機能の低下(%VC 75.6% FEV1 57.2%)を認め、術前に麻酔科受診していただき、現在の呼吸機能で移植手術可能であることを確認している。
残る問題点は、レシピエントが高齢であることと結核の既往があることであったので、INH 予防内服と結核再発の危険性について説明した際に、「結核については耐性と言われたような気がする。」とご本人からお話しがあった。 肺結核の手術後 24 年が経過しておりご本人の記憶も明確でなかったので、当時手術を行った A 病院の呼吸器外科に問い合わせた結果、既にカルテ記録は残っていなかったが、感受性の記録で、INH RFP EB SM KM EVM TH CS CPM PAS のすべてに耐性がある多剤耐性菌であることが分かった。 多剤耐性結核菌は現在の医療においても大きな脅威であることをレシピエントとドナーに説明し、腎移植は中止とした。
今回はご本人が申し出て記録が残っていたため多剤耐性であることが判明したが、高齢者の腎移植が増えていく中で、結核の既往を持つレシピエントの術後再発例では注意が必要であることを実感した症例であった。耐性結核菌の治療についての考察を交えて報告する。