親子間生体腎移植を予定している神経性食思不振症の既往のある 1 女性例
【症例】 39 歳女性。16 歳頃に学校でのいじめを機に神経性食思不振症を発症し、誘発性嘔吐や下剤の乱用がみられるようになった。1 年間で 40→29 kg へ体重が減少し、心療内科や精神科で入退院を繰り返した。脱水に対し補液で対処されていたが、腎機能は徐々に低下し、37 歳時に腎臓内科へ紹介された。紹介時体重 41 kg、Cr 3.3 mg/dL、低 K 血症、代謝性アルカローシス、下剤の乱用から偽性バーター症候群が背景にあり、低 K 血症や繰り返す脱水により腎不全を呈しているものと考えられた。腎不全に対し危機感を感じ、その後は意識的に食事を摂取し、下剤も減量するようになった。
しかし、末期腎不全(BUN 163 mg/dL、 Cr 7.82 mg/dL)に至り、38 歳時に血液透析導入となった。導入時、骨塩量は YAM 腰椎 70%、大腿骨頚 部 48%と著明に低下しており、intact PTH 835 pg/mLと二次性副甲状腺機能低下症を認めていたため、 マキサカルシトールの静注が開始されたが、転倒により左上肢を骨折した。維持透析管理は問題なく、精神状態、摂食状況も安定して経過した。
透析導入 3 ヶ月後、母による腎提供の申し入れがあり、再度腎臓内科を受診した。 ドナーは 68 歳で血液型一致、リンパ球クロスマッチ陰性。高血圧症があるが、降圧薬 1 剤のみで血圧管理良好である。腎移植に際し、ドナー、レシピエントとも絶対的禁忌事項には該当しないものの、レシピエントに精神疾患や著明な骨塩量低下に伴う骨折の既往があることから、ステロイド使用による精神疾患の再燃や易骨折性の増悪が懸念される。それぞれの問題点に対し、移植前から精神科が介入し、移植直後からビス ホスホネート製剤の開始を検討している。
このようなケースにおける移植適否の判断、さらに移植前後の対応について広くご意見を伺いたい。