家族性地中海熱(FMF)を背景とする肝硬変合併血液透析患者に対して肝腎同時移植を検討している一例
【症例】57 歳男性
【現病歴】 出生時に右腎萎縮、無機能腎を認め 9 ヶ月時に摘出された。10 歳時から月 1 回程度の発熱、腹痛を繰り返し、12 歳時に虫垂炎、腹膜炎として手術された後も持続したが 32 歳時に自然消失。46 歳時に長男が FMF(Exon2 の E148Q ヘテロ変異)と診断されたのを機に自身も FMF と診断され、アミロイドーシス 発症予防にコルヒチン内服を開始された。また 15 歳頃から蛋白尿を指摘され、徐々に Cr が上昇し嘔気 も出現したため 57 歳時に血液透析導入となった(Cr9.20mg/dL)。その際、妻をドナーとした生体腎移植の希望があり、術前検査を施行した。検査の結果肝硬変(Child-Pugh B、MELD 23 点)と診断され、門脈圧亢進症による少量の腹水、脾腎シャント、脾腫、食道静脈瘤を認め、肝細胞癌の合併はなかった。肝腎同時移植の可能性も考え生体腎移植は一旦中止とし、現在緊急的な肝移植適応ではないため血液透析を継続しながらフォローしている。 腎機能障害の原疾患は腎アミロイドーシスまたは二次性 FSGS を疑う。肝硬変の原因としては、FMF との関連が示唆される特発性肝硬変または肝アミロイドーシスを疑うが、消化管粘膜にはアミロイド沈着を認めなかった。
【考察】 肝硬変合併 ESRD 患者は、代償期であっても門脈圧亢進症を伴う場合は肝腎同時移植が推奨される。また肝硬変合併 ESRD 患者において、肝腎同時移植が肝単独移植よりも生命予後が良く、肝・腎の二期的 移植と比較しても同一ドナー肝による免疫保護効果から優れた成績が期待できる、という報告がある。一方、脳死移植の待機日数の長さが懸念される。肝硬変合併血液透析患者に対する治療選択において示唆に富む症例と考え、報告する。