生体腎移植ドナーのフォローの現状と今後の取り組み
【はじめに】 生体腎移植ドナーの、腎提供後フォローはレシピエントの管理と共に重要である。腎提供経過とともにフォローアップ率が減少することは欧米のみならず本邦でも同様の傾向がある。当院の腎移植後ドナーのフォローの現状から課題と改善点を見出す。
【対象・方法】 当院で 1998 年 7 月から 2017 年 3 月までに生体腎移植を行ったドナー連続 175 人を対象にフォローの有無を電子カルテ情報から横断的に検討した。当院フォローなしの基準を最終外来から 1 年以上経過し、かつ当院での次回外来予約が存在しないものとした。
【結果】 175 症例中、当院フォローがある症例が 61%(105 人)、ない症例が 37%(63 人)、死亡した症例が 2% (4 人)存在した。当院フォローなし群の中で近医紹介が 32 人であり、少なくとも医療機関でのフォローが確認されているドナーは 78.2%(137 人)であった。一方でフォローが確認できなかったドナーが 16.6%(29 人)、海外が 3%(2 人)であった。フォローが確認できなかった 29 人においてレシピエントがグラフトロスもしくは死亡している症例は 31%となった。死亡した 4 症例に関しては、直接腎提供が関与した腎不全や心血管疾患ではなく、悪性腫瘍 2 名、交通事故、敗血症であった。
【まとめ】 生体腎ドナーは遠方に居住している可能性も高く、移植施設への定期的な通院は難しいことが多い。その場合には近医への確実な通院指示とデータの取り寄せを行うことで、ドナ-の安全性を継続・実現可能的に行うことができる。今回の調査にて、カルテ上ではドナーのフォローアップが不明な症例が一定頻度認められたため、このようなドナーへの電話確認等で真のフォローアップ率を確認し、フォローが中断してしまう要因を解析する。