日本腎移植内科研究会

腎移植内科研究会・第4回学術集会

当院腎臓内科における療法選択と今後の課題


○坂巻 裕介、香野 日高、萩生 田純、萩原 正幸、日鼻 瑛、林 晃一、中川 健
東京歯科大学市川総合病院 腎不全治療センター

当院は千葉県市川市にある 500 床を有する総合病院で、2014 年以降、末期腎不全患者に対して 3 つの腎代替療法を提供している(血液透析 89%、腹膜透析 2%、腎移植 9%)。2018 年 4 月現在までの当院の腎移植実施数は、計 30 例である。千葉県市川市は高齢化が急速に進む地域でもあり、末期腎不全の際には、透析治療が大半を占める状況にある。しかし腎移植を希望される 60 歳代までの CKD 患者も決して少なくない。
当院で腎移植を行った患者のうち、当院腎臓内科からの紹介は、全体の 25%で、残りの 75% は、移植医あてに近隣の内科クリニックや透析クリニック、総合病院からの紹介である。また、腎移植をオプション提示に含めた療法選択は、当院では外来スタッフ数の問題もあって、現在、腎臓内科医から、進行 CKD における教育入院の一貫という形で行われることが多く、その後は外来で患者・家族の意思の再確認を行うことになる。しかしながら、実際には、当院紹介受診時にすでに高度の腎機能低下を認めているために治療法の早急な選択を余儀なくされる場合や、腎移植に対して誤った理解をされている患者・家族も少なくない。さらに透析大国ゆえに腎不全イコール透析という考えが根強いこと、CKD 治療の重要性について理解されていないなどの治療法選択への影響が無視できない問題を抱えている。
当院における療法選択の目的は、個々の患者の価値観・人生観に配慮した腎不全治療法選択の手助けを行うことにあり、透析を導入された後も、近隣の透析クリニックと連携し、腎移植希望時に対応している。このように、療法選択を含めた腎不全治療の充実化を図るためには、腎臓内科医とかかりつけ医との間の CKD 地域連携に始まり、腎移植を透析同様、進行 CKD 患者に対する身近な医療として提供できるよ う CKD と腎代替療法の正しい情報提供を行うこと、透析クリニックとの連携を行うこと、の 3 つが少 なくとも重要ではないかと考えている。
千葉県市川市では CKD 地域連携については、他の地域に比べてみてもいまだ十分ではなく、遅れをとっている状況である。当院における療法選択、千葉県市川市における腎移植を含めた腎不全治療の実際と今後の課題について本学会にて報告する。