ABO 血液型不適合腎移植における術前抗体価と抗体除去療法についての検討
当院では 2006 年に ABO 血液型不適合腎移植を開始し、2017 年 3 月までに 17 例を経験した。ABO 血液型不適合腎移植では、抗体関連型拒絶反応を避ける目的で、移植術前に脾臓摘出もしくはリツキシマブ投与による B リンパ球除去療法と抗体除去のためのアフェレシス療法が施行される。術前のアフェレシス療法として二重膜濾過血漿交換(DFPP)2 回、単純血漿交換(PEX)1 回を施行する。17 例中 8 例で DFPP、PEX の変更を必要とした。
【症例 1】 47 歳、女性。抗 B-IgG 抗体 8 倍であり、DFPP、PEX を施行せず、術 1 週間前からの免疫抑制療法とリツキサン 100 mg×2 回投与で移植を施行しえた。
【症例 2】 71 歳、男性。抗 A-IgG 抗体 256 倍で、術 1 週間前からの免疫抑制療法と DFPP2 回施行では抗体価 128 倍と低下せず、移植は延期。5 ヶ月後、術 2 週間前からの免疫抑制療法(MMF1500 mg、PSL10 mg)を開始し、リツキサン 100 mg の再投与と DFPP3 回、PEX1 回施行し、術直前の抗体価 32 倍で移植を施行 した。術 1 週間後抗体価は 8 倍。
【症例 3】 66 歳、男性。抗 A-IgG 抗体 512 倍、抗 B-IgG 抗体 512 倍で、移植 1 ヶ月前に脾摘術。20 日前から免疫抑制療法開始、10 日前より 2 回の DFPP、1 回の PEX、さらにその後 DFPP と PEX を 1 回ずつ施行し、 術直前に抗A、抗 B抗体ともに8倍と低下し移植を施行した。術1週間後抗体価はA/B 8/16倍であった。 抗体価に応じて、不必要なアフェレシス療法は削減しうること、また抗体価著明高値の症例に対してはアフェレシス療法の強化でコントロールしうることが示唆された。