日本腎移植内科研究会

腎移植内科研究会・第4回学術集会

常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)、ミトコンドリア脳筋症(MELAS)同時罹患患者に対する生体腎移植の経験


○藤方 史朗1、岡本 賢二郎1、西田 敬悟1、廣田 圭祐1、赤澤 早紀1、三宅 毅志1、中島 英1、西村 謙一1、山師 定1、菅 政治1、茎田 奈央子2、綿谷 博雪2、瀧上 慶一2、西村 誠明2、堀元 直哉3
1愛媛県立中央病院 泌尿器科、2愛媛県立病院 腎臓内科、3住友別子病院 腎臓内科

患者 20 代女性 既往歴 6 歳蛋白尿 家族歴 父:ADPKD 現病歴 ADPKD による慢性腎不全にて先行的腎移植目的にて X-1 年当科紹介された。ADPKD(CT:R223ml L313ml total 541ml ↑0.5%/year) にしては腎機能の進行速度が速いこと(eGFR25→7/year)より他疾患の合併を考え、難聴、低身長、心拡大を認めミトコンドリア脳筋症(MELAS)を疑い母親を含め遺伝子検査施行。A3243G 変異を認め変異率は 50%であった。移植は一旦延期とし維持透析施行。
本人、家族の強い希望で母親をドナーとする血液型不適合生体腎移植を計画。母親の A3242G 変異率は 6%で MELAS は発症していなかった。レシピエントは MELAS や心筋症も併発していたが、移植する事で ADLの改善、尿毒症による全身への影響を抑えたいと考え、倫理委員会で承認を得た上で X 年生体腎移植施行した。
麻酔管理については、肥大型心筋症に準じた麻酔管理、静脈麻酔薬、酢酸輸液を用いた。筋病理診断でも MELAS に合致した。Induction として Rituximab、免疫抑制剤は FK MMF MP とし、術後経過は良好であり、Cr0.66mg/dl で推移し、心機能も安定している。
先行的腎移植予定で紹介いただいた後、MELAS 合併していること判明し一旦腎移植を延期した症例を経験した。文献的考察を含めて報告する。