日本腎移植内科研究会

腎移植内科研究会・第4回学術集会

潜在性結核感染症ドナーからの親子間生体腎移植の一例


○森川 幸恵、糟野 健司、西川 翔、西森 一久、西川 雄大、小林 麻美子、森田 紗由、福島 佐知子、横井 靖二、三上 大輔、高橋 直生、木村 秀樹、岩野 正之
福井大学 腎臓内科

【症例】 37 歳、女性。親子間生体腎移植を希望。ドナーの幼少時に同居していた叔父が結核であったため QFT 検査を実施し、陽性であった。画像所見、喀痰と胃液の培養と PCR は全て陰性であり、潜在性結核感染症と診断した。ドナーに対し 6 カ月間 INH を中心とする抗結核薬を投与したが、肝機能障害により中断 した時期があったため、移植後よりレシピエントに対し INH の予防内服を行った。現在のところレシピエントには結核の症状、画像所見、QFT 陽性化は認められていない。

【考察】 日本の結核罹患率は 13.9(10 万対)と米国の 2.8 などに比べ高く、中蔓延国とされている。移植後に結核を発症した症例報告は多いが、潜在性結核感染症ドナーからの移植報告はなく、ドナーに対する術前スクリーニングが十分になされていない可能性がある。米国では持ち込み結核感染が 16 例の臓器移植で確認され、2 例が死亡したため、2012 年にガイドラインが作成されている。術前治療完遂率は米国でも 50%以下であるが、術前情報に基づく術後管理により移植後結核発症を未然に防げる利点は大きい。本例はドナーの結核に関する問診と IGRA 検査の重要性を示唆する貴重な警鐘例と考えられた。