先行的腎移植(PEKT)時のバスキュラーアクセスにおける当院の現状と検討
【背景】 本邦の腎移植では生体腎移植が多数を占めており、最近は PEKT を希望する患者の割合も増加傾向にある。当院でも移植外来初診者の半数以上に増加しているが、PEKT 目的に移植外来を受診した時点ですでに腎機能低下が進行しており、手術までに透析導入が必要となる患者も少なくない。その際のバスキ ュラーアクセス(VA)を作成するか、どの VA を選択するか明確な指針はない。
【対象】 2013 年 1 月~2018 年 5 月に当院で腎移植を受けた患者 113 例のうち、52 名が PEKT 目的に受診した。 52 例中 15 例が移植前に透析導入となっており(PD:1 例、PD から HD へ移行:1 例)、27 例は周術期に非カフ型カテーテルにて透析を施行されている(血液型不適合による血漿交換の 7 例含む)。
【結果】 移植外来受診時の腎機能はほぼ CKD ステージⅤであった。周術期前に導入された患者のうち選択された VA は 15 例中 9 例が AVF で、4 例がカフ型カテーテルであった。ただし、2013 年~2017 年ではほぼ全例 AVF が選択されていたが、最近では短い待機期間であればカフ型カテーテルによる導入が選択されている。4 例には術前の感染症発生は認めなかった。また周術期に非カフ型カテーテルにて 20 例が透析を施行され、1 例で感染による手術延期を認めた。
【考察】 個々の症例により VA 作成理由は違うが、カフ型かテーテルを選択する利点としては、AVF 作成による心負荷を避けられ、VA トラブルが回避できる点が挙げられる。欠点としては感染症リスクが挙げられるが、当院の検討では待機期間で感染抜去に至った例はない。周術期を含め早いタイミングより透析開始を検討した場合、不要な AVF 作成を避けうる方法として、カフ型カテーテルによる短期間導入は有用と思われる。来院時、周術期データなどを含め今回検討を行う。