家族性 LCAT 欠損症を基礎疾患とした糖尿病性腎症による末期腎不全に対して生体腎移植術を施行した 1 例
【症例】 60 歳男性。家族性 LCAT 欠損症が背景にあり 39 歳までに 5 回の急性膵炎の既往がある。徐々に膵臓は萎縮し 45 歳時に糖尿病と診断された。52 歳時に糖尿病性腎症による慢性腎不全のため血液透析を導入された。妻をドナーとした生体腎移植を希望され当院受診された。血小板 5 万/µL と低値で、術前精査で特発性血小板減少性紫斑病の合併が判明した。手術に際して血小板数増加が必要であると判断しステ ロイド投与、血小板輸血、免疫グロブリン大量療法を施行したが効果はなかった。2016 年 X 日に血液型適合生体腎移植術を施行し、術後は自尿を 500ml/時程度得られていたが X+1 日から尿量が低下し X+2 日には血清 Cr 上昇がみられた。急性拒絶反応を疑い同日よりステロイドパルス療法を施行した。X+4 日目から尿量は増加し血清 Cr も低下傾向で X+16 日に退院とした。免疫抑制療法は導入期にタクロリムス(TAC)、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、メチルプレドニゾロン(MP)、バシリキシマブ (BXM)を使用し、維持期は TAC、MMF、MP で管理した。術前の尿蛋白 2.1g/gCr であったが、X+16 ヶ月には尿蛋白 0.57g/gCr、血清 Cr 1.3mg/dLで腎機能は保持されている。
【考察】 家族性 LCAT 欠損症では移植腎に病変が再発したとの報告がある。本症例は術前の血清 TG 600mg/dL前後であったが、術後は血清 TG 1200mg/dLへと上昇を認め、ステロイド内服の影響が考えられた。これまでの腎移植プロトコールでは TG 高値例では早期に腎機能の悪化を来すとの報告が多いが、近年の免疫抑制プロトコールを用いた報告は少なく、今回文献的考察を加えて報告する。