腎移植内科研究会・第4回学術集会
献腎移植後に発症した進行膀胱がんの一例
1熊本赤十字病院 総合内科、2同 腎臓内科、3同 外科
【症例】52 歳男性
【現病歴】 小児期からのサンゴ状腎結石と慢性腎盂腎炎によって末期腎不全となり、17 年間の血液透析を行っていた。その後、脳死下献腎移植を施行され、移植後約 4 ヶ月で肉眼的血尿が出現した。
【臨床経過】 CT で膀胱に腫瘤影を認め、骨盤内リンパ節腫脹を伴っていた。尿細胞診は ClassⅣであり、膀胱壁に多発乳頭状腫瘤を認めた。膀胱鏡下生検を行ったところ、高分化の尿路上皮癌の組織像であり、膀胱がんの診断となった。膀胱がんに対して化学療法を 6 クール施行したが、膀胱がんは進行し、腎移植から 1 年 3 ヶ月で死亡した。
【考察】 免疫抑制療法を用いる腎移植患者では高率に悪性腫瘍が発症することが知られている。腎移植後の悪性腫瘍例の検討では、10 年以上の血液透析施行期間は腎移植後悪性腫瘍発生の有意なリスクであるとされている。また、腎移植患者のみならず、血液透析患者でも、膀胱がんを含めた悪性腫瘍の発生率、死亡率は健常人よりも高い。献腎移植の待機年数は 10 年を超えており、待機中の定期的ながん検診は重要である。献腎移植後早期に発症し、急速な経過を辿った膀胱がんの症例について、文献的考察を交えて報告する。