日本腎移植内科研究会

腎移植内科研究会・第4回学術集会

腎移植レシピエントにおける血清アルブミンの重要性


○土本 晃裕1、松隈 祐太1、川井 康弘1、植木 研次1、中川 兼康1、山田 俊輔1、加来 啓三2、土井 篤2、岡部 安博2、升谷 耕介3、中野 敏昭1、中村 雅史2、北園 孝成1
1九州大学 病態機能内科学、2九州大学 臨床腫瘍外科、3福岡大学 腎臓・膠原病内科

【背景と目的】血清アルブミンは血管内の抗酸化物質であり、蛋白尿、栄養障害、炎症のマーカーのひとつである。本研究では、腎移植レシピエントにおける血清アルブミンと予後との関連性を検討した。

【方法】2006 年から 2012 年に九州大学病院において 16 歳以上で移植後 1 年以上観察された 387 例の腎移植レシピエントを対象とした。 移植 1 年後の血清アルブミン(ALB1y)で 3 分位に分類し(T1:1.4-4.1 g/dL、n= 93、T2:4.1-4.3 g/dL、n=145、T3:4.4-5.6 g/dL、n=149)、移植 1 年後以降の総死亡、心血管事故、移植腎機能低下、 悪性腫瘍、感染症発生を評価した。

【結果】患者背景は、年齢(中央値、75%信頼区間)44(35-56)歳、男性 233 名(60%)、献腎移植 56 名(14%)、糖尿病性腎症 82 名(21%)であった。ALB1y は、LDL コレステロール、 推算糸球体濾過量と正の相関を認め、年齢、透析歴、糖尿病性腎症、1 年以内の拒絶の割合、C 反応性蛋白と負の相関 を認めた。一方、肥満指数、尿蛋白量との関連は有意ではなかった。 患者背景因子で調整した Cox 比例 ハザードモデルにおいて、ALB1y はその後の総死亡(T1 群 HR 4.82、P=0.004、T2 群 HR 1.32、P=0.680、 vs T3 群、P for trend=0.005)、 心血管事故発症(T1 群 HR 5.20、P=0.0002、T2 群 HR 2.03、P=0.140、vs T3 群、P for trend=0.0004)と強く相関した。 一方、移植腎機能低下との関連性は弱く(T1 群 HR 1.96、P=0.056、 T2 群 HR 0.84、P=0.635、vs T3 群、P for trend=0.071)、悪性腫瘍や感染症の発症率と関連しなかった。

【結論】移植後の血清アルブミンは腎移植レシピエントの死亡率の危険因子であり、心血管事故の発症が機序に関与している。血清アルブミンと動脈硬化疾患の発症との関連性が示唆された。

<参考資料>


Representative Table: Serum albumin at one year and various outcomes.
Multivariate models were adjusted by selected confounders among the following confounders; recipient age and sex, donor type, ABO incompatible transplantation, dialysis duration, mismatch number of human leukocyte antigen, past cardiovascular episodes, past malignancy episodes, past rejection episodes, median blood pressure, body mass index, logarithmic C reactive protein, estimated glomerular filtration ratio, low density lipoprotein cholesterol, logarithmic urinary protein excretion. If the P value was >0.20, the variable was eliminated from the multivariate analyses.